厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「そ、そんなバカな……話が違う。あの女、絶対にうまくいくと――」

 公爵の威勢はすっかり消え失せ、蒼白になって口元を震わせている。ほかの二爵、三令嬢も同様だ。彼らの悪だくみが暴かれるのは、時間の問題だろう。

 それにしても、朝まで一緒に過ごしたという表現はいかがなものかと思う。日課の特訓をして遊び、部屋に戻るのが面倒だと言う彼が、そのまま隣で眠ってしまった――ただそれだけのことなのに、あらぬ誤解を生んでいるような気がする。

「へ、陛下……あの……」

 顔を赤らめてうつむくフランの反応は、余計に場を煽ることになってしまった。驚愕の視線がいくつも突き刺さる。
 いたずらな微笑みを浮かべたライズが、唐突に遊び心を発揮した。

「なんだ、フラン。他人行儀だな……名前で呼べと言ったろう」

(い、言ってません、そんなこと……)

 ライズが席を立ち、目の前へと移動してくる。
 フランを椅子から立たせると、その場所にライズが先に腰を下ろし、それからフランを膝に乗せるように導いた。
 いったいなんのつもりだろう。小動物サイズのときは何度もお世話になったポジションだけど、今は人間の姿ですよ陛下、と心の中で叫ぶ。
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