厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 その理由は、少し掘り下げて調べれば明らかだった。

『フラン様は王妃の実の娘ではありません。公にはしていませんが、王が作った庶子のようです』

 どうやら妹王女が生まれる直前にその存在が発覚し、密かに引き取り、王妃の出産の時期に合わせ双子として公表した――ということらしい。

 王妃は嫉妬深く、フランに対して冷たく接していたという。あからさまな態度だったようだが、出生の秘密はフラン本人には知らせていないようだ。

 フランは、これまで疑問にも思わず過ごしてきたのだろうか。
 だがその事実を軽々しく伝えるつもりはなかった。金色の瞳が悲しみに陰るのを見たくはない。

(……この気持ちはなんだ?)

 即断即決、惑うことの少なかったライズにとって、もやもやと胸を覆うような心境は馴染みのないものだった。
 すると視界の端に、ひょっと山形のふたつの影が現れる。眠っているフランの頭頂部に、ピンク色の三角耳が飛び出していた。
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