厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「ん……ライズ様……」

 能力のコントロールを覚えてきた彼女だが、寝ぼけると耳が出てしまうこともあるようだ。
 考えるより先にそれに手を伸ばし、そっと撫でる。するととろけそうな顔をして、むにゃむにゃと小さな唇を動かす。

「ふにゃ……好き……もっと……」
「……フッ」

 ついつい、こちらの口元も緩んでしまう。

(そうか、愛しいとは……こういう感情をいうのかもしれないな)

 頭を抱えるように引き寄せて、目を閉じる。
 城に着くまでの、穏やかな時間。
 密やかな触れ合いは、まどろみの内に過ぎていく――。
< 142 / 265 >

この作品をシェア

pagetop