厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「母上。私が呼び寄せた令嬢に対し、急に部屋を移れとは、少し横暴ではありませんか」
「ライズ……あなたこそ、わたくしに断りもなく勝手にこの部屋を私物化して、わがままが過ぎるのではなくて? 今までは大目に見ていたけれど、本来ならば皇妃の部屋の管理も、離宮に住まわせている令嬢たちの処遇に関しても、権限は皇太后であるわたくしにあるのですよ」
「それは、そのとおりですが……」

 眉を吊り上げている皇太后は、普段は思慮深く、子煩悩な人物だ。息子である皇帝の行動を尊重し、多少は我慢をしていたようだが、それも限界にきたのかもしれない。

「あの……かしこまりました。すぐに移る準備をいたします」

 間に入ったフランがそう答えると、皇太后はひとまず留飲を下げたように頷いて、言葉を続けた。

「それからもうひとつ。神聖国メディスから、第三王女のシルビア姫を花離宮に迎えることにしました。急に空室がいくつもできて、寂しくなってしまいましたからね」

 メディスとは、帝国と同じ大陸の続きにある同盟国である。
 ライズが驚いた様子で、わずかに目を見張った。
< 144 / 265 >

この作品をシェア

pagetop