厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 ほぅ、と見惚れながら、吸い寄せられるように近づいていった。彼の視界に入れば、フランにも声をかけてくれるかもしれない――。
 けれど賓客の相手を終えた彼は、フランではなくシルビア姫のいる方向へと進みだした。
 あっと思っている間にふたりは合流し、和やかに視線を交わして談笑を始めてしまう。

(ライズ様……)

 どうしてかショックを受け、その場から一歩も動けなくなってしまった。
 これまで名のある令嬢にも期待を持たせず、一律冷淡にあしらっていたライズが、今この場ではシルビア姫を丁寧にエスコートし、笑顔すら見せている。
 その恩恵に与るは、白磁のような頬を朱に染め、安心しきった様子でライズに寄り添うシルビア姫。ふたりはまるで仲睦まじい夫妻のごとく、息が合っているように見えた。
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