厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 自室に戻ってからも、再び気落ちしてしまったフランの様子を見て、サリーは一生懸命に励ましてくれていた。だが自分ではどうしようもないほど心が打ちひしがれている。

(陛下は私のことを、どう思っていらっしゃるんだろう……)

 顔を見れず、声も聞けずにいることを寂しいと感じているのは自分だけなのかもしれないと思うと、悲しくて消えてしまいたくなる。
 晩餐会の夜、額にキスを与えられたときには一歩距離が近づいたように感じられたのに、今は倍ほども遠く離れた気がしていた。

 それからも、どれほど苦しくとも日課や勉強会への出席は怠らずにいたが、状況を覆せるようなチャンスは、そう簡単に巡ってくるものではない。

 代わり映えのしない、暗闇の中を手探りで進むような日が続く。

 そのうちに軍事国家たる国の側面から火種が上がり、国内は一時騒然となった。南側国境付近で起こった他民族との小競り合いが長引き、戦況が悪化したため、皇帝みずから指揮を執るべく、加勢の軍を連れて遠征に出ることになったのだ。
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