厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 茶葉を蒸らしている間、急に現実感を見失い、そわそわしてしまう。
 会いたいと思っていた相手、それも皇帝であるライズが窓から現れるなんて、もしかしたら自分はいつの間にかベッドで寝ていて、夢でも見ているのかも。
 けれども、心を込めて淹れた紅茶をお盆に乗せて運んでいってもなお、その人は幻のように消えたりはせずにそこに居た。

「うん、うまいな」

 ティーカップの縁に口をつけ、頷くライズを見て、フランはほっとした。

「お口に合ってよかったです」

 祖国では専属侍女はつけられておらず、よく自分でお茶を淹れていたから、茶器の扱いは実は手慣れている。ライズは普段、クリムト以外の側仕えを寄せつけないというから、こうした面で自分も力になれるのではないかと自信になった。

 帰城したばかりで疲れているはずの彼を長く引き留めるわけにはいかないと思いつつも、一緒にいられる時間が楽しくてたまらない。離れていた間の出来事を語らいながら、浮き立つような時間を過ごした。
 舞い上がっていた気持ちが落ち着いてくると、ふと異変に気がついた。
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