厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

はかなき皇弟ルーク(1)

 窓から差し込む日の光を眩しく感じ、目を細めた。
 目覚めはすっきりしていて、体に溜まっていた疲れが消えている。マナを使ったことによる精神的な疲労も、きれいに解消されていた。
 すぐに昨夜の出来事を思い出し、もしかしたらと周囲に視線を走らせる。
 けれど、室内にライズの姿は見当たらなかった。フランが眠ってしまったあと、本城へと戻っていったのだろう。

(昨晩は、ライズ様と……)

 蜂蜜のように甘い時間を過ごせたことは、しっかりと覚えている。恋してやまない彼と、念願のキスをしたことも。

「……きゃぁぁ……」

 その場面をつぶさに思い返し、寝台の上で顔を覆ってのたうち回った。嬉しさと恥ずかしさで胸がはち切れそうだ。
 唇と唇を触れ合わせただけなのに、聞きしに勝る多幸感だった。好きな人から愛情を示す行為を受けて、幸せでないはずがない。
 心臓がトクトクと速い音を立てた。彼のセリフの一語一句、吐息の熱さや唇の感触まで思い浮かべて、じんと余韻に浸る。
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