厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 シルビア姫は謙遜を見せながら、頬を染めて次のように言い添えた。

「それに、わたくしは処世術についてはまだまだ未熟です。近い将来、旦那様となるお方にがっかりされないよう、もっと女性としての魅力も磨いていきたいのです」
「あなたに不満を抱く男性なんていないと思うけれど……そうね、シルビアさんは帝国一の男性に嫁ぐのでしょうから、すべてにおいて完璧を目指さねばなりませんね」
「まぁ、先生ったらそんな……わたくしが皇妃に選ばれると決まったわけでは……」

 軽い冗談に、どっと笑いが起きる。フランは少しだけ、喉を詰まらせてしまった。
 とても笑う気にはなれない。それとも他の令嬢たちは、すっかり心の整理をつけているのだろうか。
 講師はにっこりと満足げな笑みを浮かべると、授業に話を戻し、全体をぐるりと見回して説いた。

「皆さん、よろしいですか。貴婦人としてもっとも大切な要素は、慎ましさ、賢さ、そしてなにより『貞淑』であること。魅力を磨くことは大事ですが、一方で誘惑や危険も増えるでしょう。そうした落とし穴にとらわれない、強い心構えも必要になります」

 そこで言葉を切ると、神妙な表情と一段低い声に変えて言う。
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