厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 「穢れ」という強い言葉が、衝撃的に心に刻まれる。
 もちろん、フランはライズのことを心から愛しているし、一途な思いなら誰にも負けない自信がある。けれど自分はきっと選ばれはしないだろうから、これ以上好きになってはいけないと心に蓋をしたばかりなのだ。

 怖い、傷つく前に逃げたいと思ううしろ向きな気持ちは、彼への裏切りになるのだろうか。そもそも逃げ道なんてあるのだろうか。

(ライズ様が、キスなんてなさるから……)

 どういうつもりで、あんなことをしたのだろう。喜びを植えつけておいて、残酷だ。

「どうかしましたか? 今日の講義はおしまいですよ」

 思考の深みにはまっていたら、講師から声をかけられた。ハッと顔を上げると、他の令嬢たちはすでに席を立ち、ぞろぞろと部屋から出ていくところだった。
 慌てて立ち上がり、講師に礼を言って、その場をあとにした。
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