厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

はかなき皇弟ルーク(2)

       *

 数日後の朝、フランは皇帝の見送りに出るため、身支度を整えて本城のエントランスホールへと向かった。
 これからライズは数名の供を連れ、他国との外交会談に出立する。
 国を空けるのは十日程の予定と聞いてはいるが、しばらく遠くに離れてしまうのだと思うと寂しさが隠せない。

 ライズはまだ姿を見せていないようだったが、普段とは違う場の雰囲気に、フランは首を傾げた。集まった人々が、そわそわと落ち着かない様相を見せている。
 近くにいる令嬢に聞いてみようかと考えていると、廊下の奥が騒がしくなった。外交に向かう皇帝とその従者たちが現れたのだ。
 すぐに口を閉じ、頭の位置を低くした。
 目の前に差しかかるのを今か今かと待っていると、近づいてきたライズのそばに、華やかな女性がひとり付き従っていることに気がついた。

(えっ? どうして……)

 エレガントな外套を羽織り、使節団の一員として肩を並べているのはシルビア姫だ。
 先ほどまで令嬢たちがざわめいていた理由を、ようやく理解した。彼女が隊に同行することを事前に聞きつけた者がいたのだろう。
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