厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
(時間をつぶさないと……)

 少し考えてから、小窓をちらりと見上げた。手招きするようにカーテンがなびいている。
 ぴょんと窓枠に飛び乗ると、いつぞやと同じく目の前に立つ大樹をはしご代わりに、二階の高さから下りていって地面に立った。
 鼻を高く上げると、緑のいい匂いがする。マナという力の存在を知ってから、自然による癒やしを確かなものに感じるようになっていた。

(森林浴でもしようかな……)

 気持ちを紛らせようと、四本の足で踏み出した。
 正面に見えるは、帝国の権力の象徴であるフランベルジュ城。城郭の内部に広がる敷地は広大だ。フランが帝国に来てから三か月あまりが経った今でも、まだ足を踏み入れていないエリアは多かった。
 花離宮の周辺や、本城までの道、庭園のある方面は見慣れている。気分を変えたいと、まだ行ったことのないほうへと足を向けた。
< 190 / 265 >

この作品をシェア

pagetop