厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
彼はこの小さな宮殿に住んでおり、従者はいない。時折、往診の医務官と、世話人としてクリムトが日に何度か訪れるのだという。
「こちらで療養をされているのですか……?」
尋ねると、曖昧な頷きとともに寂しげな微笑みが返ってきた。
そもそも皇帝の弟である彼が、従者もつけられずにこんな場所に入るだろうか。
なにか事情があるのだと考えていると、ライラックの花の色をした瞳が、こちらに向けられていることに気づく。フランの話をもっと聞きたいと言われて、出身地や帝国に来ることになった経緯を語った。
「そうか、兄上の妃候補として連れて来られたんだね。だけど、それは運命かもしれない」
高揚した表情のルークは、枕元に重ねてあった本の中から一冊を抜き出して、とあるページを開いた。
表紙はぼろぼろで紙面も黄ばみ、だいぶ年季の入った書物。それは、帝国の祖となった人物、デリック・ヴォルカノの自叙伝だった。
皇妃の部屋に備えられていた帝国史が思い浮かんだが、こちらは建国以前の時代に焦点が当てられているらしい。ルークが読み聞かせるように説明をしてくれる。
「こちらで療養をされているのですか……?」
尋ねると、曖昧な頷きとともに寂しげな微笑みが返ってきた。
そもそも皇帝の弟である彼が、従者もつけられずにこんな場所に入るだろうか。
なにか事情があるのだと考えていると、ライラックの花の色をした瞳が、こちらに向けられていることに気づく。フランの話をもっと聞きたいと言われて、出身地や帝国に来ることになった経緯を語った。
「そうか、兄上の妃候補として連れて来られたんだね。だけど、それは運命かもしれない」
高揚した表情のルークは、枕元に重ねてあった本の中から一冊を抜き出して、とあるページを開いた。
表紙はぼろぼろで紙面も黄ばみ、だいぶ年季の入った書物。それは、帝国の祖となった人物、デリック・ヴォルカノの自叙伝だった。
皇妃の部屋に備えられていた帝国史が思い浮かんだが、こちらは建国以前の時代に焦点が当てられているらしい。ルークが読み聞かせるように説明をしてくれる。