厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「ライズ様、お待ち下さい。どうかお話を……っ」

 手首を掴まれ、乱暴に腰を引き寄せられる。次の瞬間、言葉を封じるように、唇を塞がれていた。
 驚いて身を離そうとしたが、がっちりと回された腕は堅牢でびくともしない。

(……!?)

 噛みつくように荒々しいキス。体が急激に熱を持つ。吐息ごと飲み込まれて、息をするのも忘れてしまう。翻弄され、瞼の裏がチカチカしていた。
 唇を重ねたまま、押されるがままに後ずさりをし、いつしか壁に背を押しつけられていた。

「んっ……う、ふうっ……」

 体全体で押さえ込まれるような抱擁。苦しいほど密着していて逃げ場はない。全身が痺れて、頭の奥が溶けてしまいそうになる。
 足に力が入らなくなり、かくりと膝が折れた。
 彼が唇を離した。ゆっくりと拘束も解かれて、ずるずると壁を擦るようにしゃがみ込む。
< 205 / 265 >

この作品をシェア

pagetop