厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
(まさか、やきもち……?)

 とても信じられないが、なんだか胸がじわじわと疼いて、こそばゆい気持ちになる。
 それを裏づけるように目元を少しだけ赤らめた彼が、気まずそうに視線を逸らした。

「もういいから、早く元気になれ。これからは以前のとおり、この部屋で過ごせ。
私がいいと認めるまでは、外出は禁止だ。わかったな?」

 早口に、しかし確固たる口調で決定づけながら、チェストの上に置かれていた水差しを掴む。そうして横に備えてあるグラスに水を注ぐと、飴玉のような錠剤と一緒に、フランの前に差し出した。

「クリムトが用意した滋養の秘薬らしい。飲めるか?」

 フランは背もたれから身を起こし、両手でグラスを受け取った。しかし手が震えてしまい、スムーズに口に運ぶことができない。これでは中身を零してしまうかもと思っていると、ライズがそれを引き取って、錠剤と水を自らの口に含んだ。そしてベッドの縁に腰かけ、身を屈めて顔を寄せてくる。

「ライズさ……」
< 216 / 265 >

この作品をシェア

pagetop