厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 顎に指が添えられ、軽く上に持ち上げられたと思うと、口が塞がれた。温かく柔らかな唇が、しっとりと重ねられている。
 頬が熱くなったが、すぐに彼の意図を組み、心を落ち着かせようと努めた。要は薬を口移しで飲ませてくれようとしているだけなのだ。

 ドキドキしながら薄く口を開くと、ころんとした錠剤が舌に乗って運ばれてくる。苦くもなく口触り滑らかなそれを、差し入れられる少しの水と共にこくりと飲み干した。
 しっとりと合わさった唇は、すぐには離れていかない。いい子だと褒めているかのように、彼の手の平が頬を伝い、うなじを撫でていく。

 うっとりと目を閉じたまま、無抵抗で身を任せた。脇で、ことりとグラスが置かれた音がする。
 無意識に薄目を開いて、甘えるように見てしまう。すると彼が身を離し、そのまま至近距離で見つめ合った。

「この間は、怖がらせてすまなかった……」
「いえ……私のほうこそ」

 互いの瞳の色に溺れるように視線を絡ませる。すると彼の唇が動いて、夢のようなセリフを、至上の褒美ともいえる愛の言葉を呟いた。

「フラン……おまえが好きだ」
「えっ……?」
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