厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 飛び出してしまいそうなほど、大きく目を見開く。
 何度も頭の中で言葉を反芻する。驚きすぎて、もう一度と確認を求めることもできない。

「女性に対し、こんな気持ちになったのは初めてなんだ。不器用ですまない……。私の思いは、迷惑にはなっていないか?」
「迷惑だなんてとんでもない……夢のようなお言葉です。私は最初から……ライズ様のことだけをお慕いしております」

 被せるように答えると、少し緊張していたようにも見える口元が、優しく弧を描く。
 そっと顔が近づいて、もう一度、キスが落とされた。
 啄むように口づけられる。幸せを感じて口元をほころばせると、今度は食むように吸われて、思わず甘い吐息が漏れる。それから唇を割って、キスが深くなった。

「ん……!」

 意識を引きずられ、一気に持っていかれる。こんなに蕩けるようなキスがあるなんて、知らなかった。口内を撫でられるたびに、肩がびくりびくりと揺れてしまう。
 唇を合わせたままクッションに深く押し倒され、がっしりとした体が覆い被さってきた。
 いつの間にか片方の手は指を絡ませて繋がれ、縫いつけられるようにシーツの上に押さえつけられている。
 もう片方の大きな手の平が、愛しげに肌の上を滑る。ぞくぞくとした痺れが体の中心を走り、頭の中で白い火花が散った。
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