厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 ぺこりと頭を下げると、侍女は慌てたような仕草をした。

「あの、敬語はどうかご勘弁ください。私、侍女としてはまだ経験が浅く、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、精一杯がんばりますので……」

 明るく素朴な表情に好感を覚えて、フランは問いかけた。

「あなたのお名前は、なんというのですか?」
「サリーと申します」
「サリー。私はフランといいます。よろしくお願いします」
「はい! あの、ですから私に敬語は……あ、頭をお上げください……!」

 仕える相手と近い目線で話したりしたら処罰されてしまうと訴える彼女に、自分は田舎から来た王女であること、気軽に話しかけてくれたほうが嬉しいということを伝える。
 するとサリーは恐縮しながらも、

「フラン様は、風変りな王女様でいらっしゃいますね」

 と言って、人好きのする笑顔を見せた。

(そういえば私、ここでは「先祖返り」だと、気持ち悪がられることもないのだわ……)

 この国で暮らすのは、悲惨なことばかりではないのかもしれない。
 親しみやすい侍女のおかげで、フランは数日ぶりに笑うことができたのだった。
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