厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
*
草花一本すらも乱れなく整えられた、美しい庭園の奥深く――。
そこには皇太后の命により、贅の限りを尽くして建てられた白亜の宮殿「花離宮」がある。
皇帝の花嫁候補たちが集められた、艶やかな女の園。
彼女たちは日夜ここで美しさやマナーを磨き、教養を高めながら、ヴォルカノ帝国の皇妃に選ばれる日を夢見て、たゆまぬ努力を続けている。
候補者の出自は、国内の有力貴族の令嬢や、友好国から呼び寄せた姫君、フランのように属国から強制的に連れてこられた領主の娘など、事情はさまざま。
皇帝自身があのとおり花嫁選びにちっとも関心を示さないので、諦めて実家に帰ってしまった者もいるというが、欠員ができれば皇太后が補充の手を回すし、我こそはと名乗り出る入宮希望者も後を絶たない。
現在でも十数名の令嬢たちが、家名と親の期待を背負ってこちらに留まっているらしい。
「年の近い女性たちがいるなら、お友達もできるかしら……」
などとフランが抱いた甘い考えは、斜めうしろをついてきている侍女によって即座に否定された。
「それはやめたほうがいいです。言うなれば、皆様はライバル同士。もちろん、事を荒立てないよう立ち振る舞う必要もあるかもしれませんが、高貴な方々はとにかくプライドが高いので……」
草花一本すらも乱れなく整えられた、美しい庭園の奥深く――。
そこには皇太后の命により、贅の限りを尽くして建てられた白亜の宮殿「花離宮」がある。
皇帝の花嫁候補たちが集められた、艶やかな女の園。
彼女たちは日夜ここで美しさやマナーを磨き、教養を高めながら、ヴォルカノ帝国の皇妃に選ばれる日を夢見て、たゆまぬ努力を続けている。
候補者の出自は、国内の有力貴族の令嬢や、友好国から呼び寄せた姫君、フランのように属国から強制的に連れてこられた領主の娘など、事情はさまざま。
皇帝自身があのとおり花嫁選びにちっとも関心を示さないので、諦めて実家に帰ってしまった者もいるというが、欠員ができれば皇太后が補充の手を回すし、我こそはと名乗り出る入宮希望者も後を絶たない。
現在でも十数名の令嬢たちが、家名と親の期待を背負ってこちらに留まっているらしい。
「年の近い女性たちがいるなら、お友達もできるかしら……」
などとフランが抱いた甘い考えは、斜めうしろをついてきている侍女によって即座に否定された。
「それはやめたほうがいいです。言うなれば、皆様はライバル同士。もちろん、事を荒立てないよう立ち振る舞う必要もあるかもしれませんが、高貴な方々はとにかくプライドが高いので……」