厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 そんな心の内を知らないライズは、静かに微笑んで言った。

「おまえの身体が大事だ。今はゆっくり休んでくれ。それから、今夜も晩餐を一緒にとろう。あとで迎えをよこす」
「はい……お待ちしています」

 誘われると嬉しくなって、自然と笑顔が戻ってくる。頷いた彼が去っていくのを、姿が見えなくなるまで見送った。

(大丈夫……ライズ様は私を好きだとおっしゃってくださったんだもの……。それだけでも十分に光栄なことだわ……)

 高貴な一家の絆を取り持つことができたこと、フランは少しだけ自分を褒めてあげたい気持ちになっていた。
 ふと、自分の家族はどうしているだろうと、懐かしい記憶も浮かんでくる。
 正妃でなくとも側妃にでもなれれば、家族は喜んでくれるだろうか。もしライズが自分の居場所を残してくれるのなら、受け入れる道もあるのかもしれない。
 いつか慣れるはずだと自分を励まし、心を元気づけた。
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