厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 三人は、ぽかんと口を開いて立ち尽くしている。
 フランが隣に立つライズの顔を見上げると、彼は打って変わって柔らかな視線をこちらに向けた。

「フラン。少し時間をもらってもよいか?」
「え? は、はい……」

 呆気に取られながらも流れるように手を取られ、人々の合間を縫って引かれていく。
 普段は玉座が置かれている奥のステージの上に、ダンスでも踊るかのように軽やかに連れ出された。すると、その珍しい光景に一斉に関心が集まったのがわかる。
 ライズは晴れやかな表情で会場を見渡すと、よく響く声でさらに注目を集めた。

「皆の者、聞いてくれ。今日のよき日に、もうひとつ報告したいことがある。私の勝手ゆえ、先延ばしにしていた皇妃の選定であるが――実はもう、心に決めた人がいる」

 そうして彼はこちらに向き直ると、繋いでいた手を持ち上げ、指にキスをして――上目遣いに切なく見つめながら、愛の言葉を口にした。

「フラン……私の妃になってほしい」

(えっ――)
< 239 / 265 >

この作品をシェア

pagetop