厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 すると、それに応える前にがっしりとした手がフランの腰に回り、体を引き戻された。トンと背中が逞しい胸板にぶつかって、そのまま居場所を固定されてしまう。
 首を動かしてうしろを見れば、クールな瞳に独占欲を浮かべたライズが立っていた。どうやらルークへの挨拶はショートカットされてしまったようだ。
 そしてライズは、少し離れたところに遠慮がちに立っているシルビア姫に声をかけた。

「シルビア姫。ルークはまだ足元がふらつくようだ。世話を頼む」
「は、はい……!」

 慌てて駆け寄ってきたシルビア姫を見て、フランはハッとした。
 シルビア姫はライズの幼馴染、いわば恋のライバルだった相手だ。あれほど完璧な人なのに、将来結ばれる相手のためにと自分を磨く努力を絶やさなかった。個人的にはとても尊敬しているし憧れてもいる。

 ライズのことだけは譲ることはできないが、相手の立場に立って考えると胸が潰れそうになるほど辛い。周囲の誰もが彼女が選ばれると確信していたのに、このような結果となり、本人はきっと深く傷ついているはずだ。
 なんと声をかけたらよいかわからず、複雑な表情でシルビア姫を見つめるしかなかった。
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