厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 しかし、ライズに言われたとおりルークの補助についたシルビア姫が見せたのは、咲き誇る百合のように満ち足りた、清々しい笑顔だった。

「フランさん、ご婚約おめでとうございます。心から祝福いたします。……ルーク様、あちらで少し休みましょう」

 そう言ってシルビア姫はルークに寄り添い、仲睦まじい様子で去っていく。
 あっさりとした引き際に、わけがわからず目をしばたいて見つめていると、ライズが耳打ちしてきた。

「シルビア姫は、ルークのことが心配でこの国に来ていたんだ。彼女は幼い頃から、ルークのことが好きだった。内密に自国に引き取りたいとまで言ってくれたんだが、そういうわけにもいかず……。だが、おまえのおかげで、すべては丸く収まった」
「そう、だったのですか……」

 ついつい気の抜けた返事をしてしまう。
 なるほど、シルビア姫がライズと幼馴染ということは、ライズと一緒に育ったルークとも近い距離にいたはずだ。

(シルビア様は……ずっとルーク殿下と、この国のことを気にかけておられたのね……)

 ライズがふたりの背中を温かく見つめていることにも、安堵する。気がかりだった重石がひとつ取り払われて、フランは大きく息をついた。
 その後もフランはライズとともに会場を回り、婚約者として紹介されていった。

 
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