厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 フランは息をのんだ。母の変貌ぶりと暴挙を前にひどく混乱している。
 それでも身に迫る危険を感じ、城内に逃げ込もうとしたが、その前にアルベールに腕を掴まれてしまった。彼の顔には迷いが見られたが、王族の命令は絶対だ。

「アルベール……」
「フラン様。申し訳ありません……」

 忠実な臣下を責めたところでどうにもならない。くじけそうになる心を叱咤し、生まれて初めて母を問い詰めるような視線を送った。

「お母様、なぜ……!」
「お母様とか呼ばないでちょうだい。あなたはわたくしの娘なんかじゃない。王が外で戯れに作った卑しい存在なのよ!」
「えっ……?」
「出産を終えて弱っていたわたくしの前に、ひとまわりも大きな赤子を連れてきて――密かに囲っていた妾がほんの少し前に出産し、亡くなった。残されたこの子は王の血を引いているから自分たちの子として育てようだなんて……そんなの許せるわけがない!」
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