厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
       *

 厳粛な雰囲気が漂う大聖堂にて、婚礼の儀式が行われている。
 祭壇の前の赤い絨毯の上に並び立つのは、純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁のフランと、輝ける新郎であるライズだ。
 皇族関係者が見守る中、ふたりは司祭の前で誓いの言葉を述べた。

「いついかなる時も、あなただけを愛し、守り、添い遂げると誓う」
「いついかなる時も、あなた様だけを愛し、敬い、添い遂げると誓います」

 向かい合い、大粒のダイヤモンドの指輪を交換したあと、身をかがめたフランの頭上にティアラが載せられた。
 ゆっくりと顔を上げると、夫となる男性の姿が目に飛び込んでくる。白と金を基調とした豪奢な衣装を身に纏った彼は、金髪紫眼も相まってこの世のものとは思えぬほど高貴で眩しい。
 まるで宗教画に描かれた全能の神のような彼が、一歩近づいてフランの肩に手を添えた。清らかな誓いのキスを、しっとりと目を閉じて受け止める。
 短くも鮮烈なその一瞬を心に焼きつけ、フランは決意を新たにした。
 眩しい帝国の太陽――自分を見つけ、導き、守ってくれた運命の人。この奇跡に感謝し、全身全霊をかけて応えていきたい。皇妃として、新たな国母として、愛する人に見合う自分でありたいと。
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