厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 あからさまな牽制。肌を刺すような圧にのまれ、こくこくと頷くのがやっとだ。

 嫌みを言われているのはわかったが、波風を立てるつもりはない。そもそもフランは人と争うのが苦手で、奪い合うくらいなら相手に譲るのが常だった。

(でも、本当に場違いなところに来てしまったのかも……)

 引きつった笑顔を浮かべて困り果てていると、左手のほうから喉を絞ったような悲鳴が聞こえてくる。

「ひっ! フ、フラン王女様……?」

 手続きに行っていたサリーが戻ってきたのだ。早くも令嬢たちに取り囲まれているフランを見て心底驚いたのだろう。真っ青になって立ち尽くしている。

 だがその登場が、空気を変えるきっかけとなったようだ。令嬢たちは目配せをし、なにやら余裕の生まれた表情で頷き合っている。

「まぁ、このくらいでいいでしょう。毒にも薬にもならなそうだし……。新人さん、くれぐれも皇帝陛下や皇太后様のお気に障るような行動は慎んでちょうだいね」

 カーネリアたちは優越感を浮かべた笑顔を残し、その場を去っていった。
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