厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 だが、時と共にその血も薄れ、もう何十年も先祖返りは報告されなくなって久しい。

 両親も、双子の妹であるマーガレットも、欠点のない普通の人間の姿で生まれ、高貴な王族として国民から信望されている。ただひとり、異能の力を備えて生まれてきた、フランを除いては――。

 そう、フランは獣人化の能力を持つ「先祖返り」であった。

 フランは人間の体にケモ耳と尻尾だけを生やした半獣の姿に変身することができ、または子狐くらいの大きさの完全な動物の姿になることもできる。

 けれども能力の発動は不安定で、体調不良や、気持ちが弱ったりすると勝手にケモ耳が出てしまったり、不安定でコントロールがきかない。

 おまけに容姿についても、父は褐色の髪に灰色の瞳、母と妹は滑らかな蜂蜜色の髪と翠眼をしているのに、フランの髪色は異質なピンク色で、瞳の色は目も覚めるような鮮やかな金――。

 誰にも似ていない容姿のせいで、本当に呪いがかかっているのではと陰口を言われたことも、一度や二度ではない。

(……いけない、くよくよ考えていたら、また獣の姿になってしまうわ……)

 そう思いながらも、どうしようもなく気分は落ち込んでくる。
 うつむき、どんぐりのような丸い目を潤ませた、そのとき。
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