厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

囲われ王女、帝国での新たな生活(4)

       *

 花離宮の姫たちの仕事――それは皇帝が通りかかる時間に本城の回廊に並び、挨拶をすることだ。朝礼と夕礼は毎日の日課とされ、そのほかに皇帝が外出から戻ったときなどにも随時召集される。

 華やかなお出迎えを幾度繰り返しても、現在のところ皇帝自身が離宮の花たちに一度も興味を示さず、常に素通りが続いているそうなのだが――とにかく若さと美貌を武器に派手に着飾って自分を売り込み、皇帝を魅了し、興味を引くこと。それが最優先の使命であり、皇太后からの至上命令である。

 皇帝が視察から戻られたとの知らせを受け、支度を終えたフランが指定の場所に出向いたときには、フラン以外のすべての令嬢はとっくに大回廊に集結し、太い柱の間に敷かれた絨毯沿いにずらりと並んで、出迎えの準備を進めていた。

 令嬢たちは遅れてきたフランの出で立ちを確認するようにちらりと視線を向けてきたが、すぐにそれどころではないと顔を背け、身繕いに余念がない様子。
 カーネリア公爵令嬢とその取り巻きたちは、最も目立つ最前列に陣取って、せっせとドレスの裾の形などを整えていた。
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