厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 日が高く、明るい光の差し込む窓辺を見上げて、フランはこくりと喉を鳴らした。

(食べるものを探しにいこう……。木の実とか、なんでも)

 椅子の座面を経由して、窓枠に飛び移った。換気のため、窓は細く開けてある。
 フランの部屋は二階の端に位置しており、すぐ目の前には立派な樹木が立っている。窓辺近くまで伸びた太い枝に飛び移り、足場を伝って外に出た。


 ――ひょこ、ひょこっ。
 視線の高さの違う散歩は、思いのほか新鮮で楽しくて。
 花の甘い蜜を吸ってみたり、野いちごを齧ってみたり、目移りしながら庭を散策するうちに、いつの間にか本城の近くまで足を伸ばしていた。

 突き当たった壁が城壁の一部だと気づいて引き返しかけたところ、どこからか漂ってくる香ばしい匂いに鼻を引きつけられた。食欲をそそる美味しそうな匂いだ。
 クンクンと鼻を鳴らし、夢中で匂いの元をたどっていく。

 反応の強い場所で立ち止まり見上げると、高い位置にある煙突から白い湯気が立ち上っている。おそらくは、この壁の向こう側に厨房があるのだ。
 もっと近づいてみようと、開きっぱなしになっていた小窓から建物の中へと入った。
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