厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
(クレームブリュレだわ……! これ、大好き……!)

 甘くて香ばしい、卵とミルクのいい匂いがして、疑うことなく舌を伸ばした。
 一口舐めたら、優しい甘みとまろやかな食感が、染み渡るように口中に広がっていく。

(美味しい……!!)

 鼻に抜けるバニラビーンズの香り。とろけるように甘いけれど、しつこくない。今までに味わったことのない、最高の舌触りと絶妙な風味だ。
 夢中になり、スプーンの上にあった欠片など一瞬で食べ尽くしてしまう。すると彼は、

「いい食いっぷりだな……。もっといるか?」

 そんな風に笑って、好物のおかわりに加え、クラッカーやサンドウィッチもちぎって食べさせてくれる。
 久しぶりにありつけた食事、それも大好きなスイーツに多幸感が止まらない。
 尻尾をぶんぶん振って、きっと表情も緩みきっている。けれど別に構わない。なんといっても今は、紛うことなき獣なのだから。
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