厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 紫の瞳は開かれずに、再びスゥ、と規則的な寝息が聞こえはじめた。
 ほっと胸を撫で下ろしながら、高鳴ったままの心臓を静めようと躍起になる。

 清々しい朝日に照らされ、いっそう眩しく見える皇帝の寝姿。なんだかいつもの毅然とした姿とは違い、無防備で穏やかに見えた。
 思わず見惚れかけたが、そんなことをしている場合ではない。
 周囲に視線を走らせると、ここは見知らぬ部屋だ。
 豪奢な天蓋つきのベッドを置いても余りある、ゆったりとした空間に華やかで重厚感のある最高級のインテリア。どう見ても、フランが立ち入っていい場所ではない。

(もしかして、ここは陛下のお部屋……?)

 なぜ、ライズとこうした状況になっているのだろうと、混乱する頭に鞭を打つ。
 夢だかなんだか知らないが、驚天動地の緊急事態だ。皇帝の寝所に忍び込んだなどと知られたら、即刻、極刑に処されてしまう。

 急いでこの場を離れなければと身を引こうとしたとき、腰のあたりに回された腕に毛布ごと体を引き寄せられた。枕代わりに敷いていたほうの腕で頭を抱え込まれ、身動きが取れなくなる。
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