厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
「やっ……!?」
「うーん……」

 より強固に抱き込まれてしまった。
 彼が目を覚ます様子はなかったが、いっそうまずい状況。どうにか逃れようと試みるが、がっちりとした腕は緩まない。
 おまけにベッドの中で体を動かしたことで、フランはある違和感を感じ取った。

(なんだか、体がスースーするような……)

 その感覚に引きずられるように、昨夜の記憶がよみがえってくる。
 離宮のサロンでライズとふたりきりで話し、彼が見ている前で獣化してしまったこと。そしてそのまま抱き上げられ、城へ運ばれるうちに眠ってしまったことを――。

 変身したということは、体のサイズが変わることによる、物理的な問題も発生したということだ。
 まさかと思いながら、抱きしめられた姿勢の中、身じろぎをして状態を確認した。

 ――着衣はなかった。

(いやぁぁぁぁぁ!!)
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