厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 絨毯に足を下ろし、ベッドサイドに腰かけたライズは落ち着いた様子で身だしなみを整えながら、言葉を続けた。

「なにもしていない。昨夜、運んできたときは、獣の姿だったからな」

 そうだった。知られたくなかった獣人の正体を、よりによって皇帝である彼に暴かれてしまったのだ。
 フランは悄然としてうつむいた。
 完全な人でもなく、獣でもない。そんな中途半端な存在であることを隠して近づいた自分は、きっと重い罰を受けることになるのだろう。

「どうか、お許しください……」
「なにがだ?」

 だけど意外にも、返ってきたのは軽い問いかけの声だった。
 立ち上がったライズはこちらの格好を気にしてか、振り返らずに言葉を投げた。

「侍女をよこすから、着替えて朝食をとれ」
「あ……ありがとうございます。あの、なにか着るものをお借りできれば、離宮に戻って……」
「戻らなくていい。今日からこの部屋を使え。私の部屋と隣接しているから、なにかあれば声をかけてくれ」
「えっ?」

 思わず大きな声で聞き返してしまう。
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