厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています

秘密のレッスン(3)

 部屋に戻ると、サリーがアフタヌーンティーの用意を調えてくれていた。

「陛下の御前に出ると、やっぱり緊張しますよね。お気持ちを休めてください」

 りんごの香りのする紅茶に、焼きたてのスコーン。たっぷりとしたクロテッドクリームをつけて食べるのが、近頃の令嬢界隈で流行っているらしい。

「わぁ、嬉しい! ありがとう、サリー」

 気遣いを嬉しく思いながら、温かくてサクサクとした食感を気兼ねなく楽しむ。
 なんて贅沢で平和なひとときなのだろう。
 元より甘い物が大好きなフランは、ひと口ごとに幸せを噛みしめた。――たとえそれが嵐の前の静けさだとしても。

(令嬢といえば……)

 ふと冷静になって、離宮の姫に義務づけられた日課のことを思い出した。
 今朝の朝礼はどうすることもできずに欠席してしまったが、まずかっただろうか。
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