厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 今夜の夕礼には出るべきかサリーに尋ねると、上司を通して確認してくれるという。
 結果、ライズからは「出なくて構わない」との返事があったので、それならばと夕礼も失礼することにした。

 内心では少しほっとしている。花離宮の姫たちの前にどんな顔をして出ていけばいいのかわからなかったから。
 姿を消したフランが皇妃の部屋に移ったことは、いずれ令嬢たちの耳にも入るだろう。それを知ったカーネリアたちがどんな行動に出るのか、想像するだけで震えが走る。
 けれども今さら辞退して離宮に戻っても、結果は同じだ。それに一生に一度の贅沢を味わえるというなら、浸らなければ損。割り切ろうと心に決める。

 夕方にかけてはライズから呼び出されることもなく、書棚にある本を読んだりしながら時間を過ごした。
 棚にみっちりと詰められているタイトルは、皇妃教育のための教科書だ。どれも難しそうな内容だったが、その中から読みやすそうなものを手に取った。
 中でもヴォルカノ帝国建国の祖、初代皇帝デリックの英雄譚が綴られた帝国史は、挿絵もあり興味を引かれて、読みふけっているうちに窓の外には夜の帳が下りていた。
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