厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 顔を強ばらせるフランを励まし盛り立てながら、入浴の手伝いとスキンケア、念入りなマッサージを施して――完璧な仕事をしたと満足げな様子の侍女は、いい笑顔を浮かべて下がっていった。「明日、詳しく聞かせてくださいね!」という一言を残して。

(もう、サリーったら……)

 おかげで髪はつやつや、肌はしっとり滑らかで、どこもかしこも触り心地がいい。
 破廉恥なネグリジェだけはどうしても受けつけられず、品のいいシルクの夜着を身に着けて、薄手のガウンを肩にかける。
 照明を落とし、キャンドルのみを灯した寝室。いい匂いのするお香が焚かれて、それだけでも十分、大人のムードが漂っている気がする。

(陛下は本当に、こちらへいらっしゃるのかしら……)

 皇帝が現れるかもしれない中扉を、じっと見つめる。
 皇妃の部屋の片側の壁には、廊下に出るものとは別の出入り口がある。その扉の奥は、皇帝の部屋に繋がっているのだ。
 もちろん普段はあちら側から鍵がかけられていて、皇妃の部屋側から立ち入ることは許されていない。ドキドキしながら、相手がやってくるのを待つしかない。
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