縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

神域では沢山の作物が育つ。
切神が手から出す火のお陰で秋の寒さを感じることも、夜の闇を怖がることもない。

夕方になっても庭から戻ってこない薫子を心配して、切神がやってきた。
「どうした。まだあの兄弟のことで悩んでいるのか」

「私は本当にこのままでいいんでしょうか」
自分の菜園を持って幸せな生活をしている。

これが生贄の生活とは考えられないことだった。
「薫子は少し考えすぎるところがある。この村の縁切りに関してなら私が行っているから大丈夫だ」

切神はそう言うと後ろから薫子の体を抱きしめた。
華奢な体がピクリと反応する。

薫子は自分の頬が熱く火照るのを感じた。
「この村にはまだまだ縁を切らないといけないものがあるみたいです」

「確かに。だけどあの兄弟はこの村の者ではないぞ」
「そうなんですか?」
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