縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「ぼ、僕たちが悪かったんです。ごめんなさい」
弟が泣きながら頭を下げる。

「もうここには来ません。だから、許してください」
このままここにいればなにか罰を受けると勘違いしたのだろう、兄が弟の手をきつくつかんで石段へと駆け出した。

その足は棒のように細くて、今にも倒れてしまいそうなくらいフラついている。
あのままじゃ今晩を越せるかどうかも怪しい。

「待って!」
咄嗟に駆け出そうとする薫子を切神が止めた。

その間に兄弟の姿はあっという間に見えなくなってしまっていた。
「ひもじい思いをしている人々全員を助けることはできない。私にはそこまでの力はない」

「だからって追い払うことないじゃないですか!」
薫子は切神の手を振り払って怒鳴った。

その目には感情が溢れて涙が滲んできている。
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