縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「私は縁切りの神だ。生贄としてやってきた相手とでないと自分から縁を結ぶことはできない。そこに不服があるのなら、もう私にはなにもできない」

不服……。
薫子は勢いよく立ち上がっていた。

切神を前にして心臓が暴れている。
どう伝えれば自分の気持が届くだろうかと考えている余裕はなかった。

「切神さまの言う通り私は生贄。そんな相手としか繋がれないのであれば、どうして早くに私を殺さないのですか」
薫子の言葉に今度は切神が動揺を見せた。

普段はあまり表情を変えないが、今は目を見開いて薫子を見つめている。
「私はそんなことを言ったつもりはない! なぜそうなる」

「だってそうじゃないですか! 生贄としか繋がれないなんて可愛そうな神様。私なんかがここへくるべきじゃなかったんです!」
薫子は感情に任せて叫ぶと、そのまま寝室を出て自分の部屋へと向かった。
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