縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

菊乃は薫子の話を興味津々で聞いてくれた。
時に驚き、時に頬を赤く染めて熱心に耳を傾ける。

さすがに甘い実のつく果物の話になったときには半信半疑な表情になったけれど、結局それも信じてくれた。
「なんだかすごい経験をしてるんだね」

夜も更けてふたりで寝床を準備して布団に潜り込み、それでも会話は尽きなかった。
薫子が寝返りを打ったとき、頭に違和感があって手を伸ばした。

そこには切神がくれたカンザシが差したままだった。
慌てて飛び出してきたから、カンザシを置いてくるのを忘れてしまったのだ。

「それ、とても綺麗ね」
囲炉裏の火で照らされたカンザシを見て菊乃が呟く。

「これも切神さまからの贈り物よ」
そう説明して枕元へカンザシを置いた。
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