縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

囲炉裏の火がなくなって寒さで薫子は目を覚ました。
外はまだ暗く、ちょうど朝の気温が下がる時間帯らしいとわかった。

薫子は布団を頭まで引き上げて、それがいつもよりぺったんこであることに気がついて再び顔を出した。
真っ暗な部屋の中、少しだけ開いた木製の跳ね上げ窓からは光も差し込んでこない。

「火はないの?」
声に出して聞いてから、ここが神社の屋敷ではないことを思い出した。

切神さまがいつも手のひらから出している火は、ここにはない。
あれも神域だからできることなんだろう。

それなら隣に菊乃が眠っているはずだと視線を向けてみると、せんべい布団はペッタンコだ。
手を伸ばしてみても菊乃の体に触れることがない。

廁だろうかと思って再び目を閉じたけれど、朝の寒さのせいでなかなか根付くことはできなさそうだ。
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