縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

次に目を覚ましたとき、太陽はすでに昇っていた。
だけど菊乃の姿は見えない。

まさかなにかあったのではないかと家の奥を探してみたけれど、誰の気配も感じられなかった。
狭い家はそれほど探す場所もない。

外の小屋も探してしまえば、もう探し場所はなくなってしまった。
薫子は囲炉裏の前に座り込んで呆然と天井を見上げた。

なにか用事があって出かけたにしても、夜が明ける前に出るなんて物騒だ。
それこそ盗賊に攫われてしまう可能性だってある。

だとしたら菊乃はどこへ行ってしまったのか……。
1人でどうすることもできず、とにかく布団を上げた。

菊乃が戻ってくるまで家の掃除をしておこうと思ったのだけれど、その時に違和感を覚えて動きを止める。
「あれ、たしかここにカンザシを置いて寝たはずだけれど……」

昨日の寝る前の行動だから自分の勘違いかもしれないと思った。
< 124 / 176 >

この作品をシェア

pagetop