縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
そしてなくなったカンザシ。
これらを照らし合わせて考えてみると、自ずと答えが出てきてしまう。

菊乃がカンザシを持って逃げた。
その考えを薫子は強く左右に首を振ってかき消した。

そんなことない。
菊乃がそんなことをするはずがない。

だけど蘇ってくるのは目を輝かせてカンザシを見つめる菊乃の顔ばかり。
親を失って生活に困窮していたんだろうか。

それで私の話を聞いて、カンザシくらいならと思って持っていってしまったんだろうか。
もしそうだとすれば、菊乃はもうこの家には戻ってこないだろう。

せっかく再開できたというのに、それはほんのひとときのことだったということだ。
薫子は囲炉裏の前に座り込んだまま動くことができなくなってしまった。

カンザシを盗まれたことよりも、菊乃に裏切られてしまったショックの方が大きい。
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