縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

神様は縁を切ることしかできない。
だけどその御蔭で災いは村から遠ざかっている。

「この平和は切神さまのお陰」
12月を迎えようとした頃、薫子は菜園の様子を確認しながらそうつぶやいた。

村は雪に包まれているけれど、去年の寒さに比べればまだましな方だった。
それもこれも、今年の大雪に悲鳴を上げた村人たちがここへやってきて、猛烈な寒さとの縁切りを頼んだからだった。

切神はすぐにその願いを聞き届け、暖かな雪の振る季節に変えてくれた。
これで雪の下の作物は甘さをまして大きく育ち、人々は寒さに震えることもなくなった。

願いを叶えてもらった村人たちはちゃんとお礼参りも忘れずにやってきて、立派な作物を置いていってくれた。
「よく育ったみたいだな」

縁側からそう声をかけられて薫子は顔を上げた。
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