縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
薫子が言うと菊乃は声を出して笑った。
冗談だと捉えられたみたいだけれど、薫子は本気でそう思っていた。

見た目もだけれど、菊乃の内側から溢れ出る美しさは誰にも負けていないと思う。
1度はカンザシを盗んだものの、悪に染まりきれなかったのが菊乃らしいと感じられる。

「切神さまはどれくらい病気について調べてくるの?」
「さぁ。長い時は一週間でも屋敷を開けるのよ」

縁を切る対象によってとられる時間は変わってくる。
切神さまも一概にいつ帰るとは言えないまま出ていくことが多かった。

「そう。それならしばらくは女ふたりで楽しみましょう」
菊乃が茶碗に山盛りのご飯をよそった。

「ちょっと、そんなに食べるの?」
「私、いつもちょっと足りないなって思ってたの。でも切神さまには内緒よ?」
菊乃はそう言って笑ったのだった。
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