縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

菊乃は山盛りのご飯をあっという間に平らげてしまった。
その食欲に薫子は目を見開く。

「そんなに食欲旺盛だったんだ」
「村ではここまで食べられないし、神様に遠慮して食べられなかったの。だけど薫子とふたりきりなら、なにも遠慮はいらないわよね」

菊乃はそう言いながらおかわりに手を伸ばしている。
これだけ元気があるのなら、村へ向かわせても病が感染ることはないんじゃないかと思えてくる。

昼食を終えたふたりはさっそく菜園へと出てきて作物が育つ様子を確認しはじめた。
次から次へと成長していく作物を見て菊乃は何度もため息をはいた。

「こんな作物が村にあればいいのに」
それが最近の口癖だった。

「残念だけれど、病が収まるまでは作物を村へ持っていくことは避けたほうがいいわね。菊乃が感染したら大変だから」
「私ならこんなに元気なのに」
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