縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
肩をすくめて言う菊乃に薫子は笑った。
薫子から見てもそう感じられたからだ。

だけど菊乃だってただの人間だ。
病から逃れることはできないだろうと思い直す。

それからふたりで食べごろの野菜を収穫していると、境内へ向かって歩いてくる足音が聞こえてきた。
足音は二人分あるようだけれど、なんだか心もとない。

村人ならもっとしっかり地面を踏んで歩いている音が聞こえてくるはずだ。
不審に感じたふたりは菜園から境内へと向かった。

そこで見たのはボロボロの服を来たふたりの男の子だった。
後ろ姿しか見えないけれど、その着物には見覚えがあった。

賽銭泥棒の兄弟だ!
そう気がつくが早いか、薫子はすぐに境内へ駆け出していた。
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