縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
今日は天気がよくて寒くも暑くもないのだけが幸いだった。
神社までの道のりを歩きながらも最後尾には武器を手にした若い男衆がいる。

いつ盗賊が襲ってくるかわからないからだ。
本来ならもっとゆっくり歩く道のりを、巫女のふたりも早足になる。

結婚式だからといって盗賊たちは待ってはくれない。
薫子は先頭のふたりに合わせて歩くだけだ。

慣れない白無垢姿に苦戦しながら村を抜けて神社へ続く石段を上がり始めた。
そのとき隣から手が差し伸べられた。

顔を向けるといつの間にか菊乃が立っている。
「ありがとう」

薫子は笑顔で菊乃の手をとり、一段一段上がってゆく。
石段を上りきった先には小さな神社があり、ここが村で唯一の神社でもあった。

どんなことでもお願いしているけれど、ここにいるのは縁切りの神様だ。
村で疫病が流行った時や、今回のように盗賊に襲われた時には必ずこの神社へ来る。
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