縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
それを何度も繰り返した。
その不可解な動きにすぐに薫子は眉間にシワをよせ、戸を叩いた。

「切神さまいますか? 開けてもいいですか?」
返事はない。

けれど薫子は戸を思いっきり開いていた。
本殿は薄暗くて様子がよくわからない。

すぐに火が本殿へと飛び込んで薫子にも周囲の様子が見えるようにしてくれた。
本殿の真ん中で切神が倒れているのだ。

薫子はハッと息を飲んですぐに駆け寄った。
「切神さま! 切神さましっかりしてください!」

呼びかけ、肩をゆさぶっても返事はない。
目はきつく閉じられていて顔色もよくないようだ。

切神がここまで弱っている姿は今までみたことがなかった。
どんなものでも簡単に縁切りしているように見えていたけれど、実際はそうじゃないのかもしれない。
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