縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

ギッギッと床を踏む足音がする。
その音で半分目を覚ました薫子は相手は盗賊かもしれないという恐怖で一気に覚醒した。

そして周りの暗さに悲鳴を上げて逃げ出そうとする。
けれど周囲は真っ暗でなにも見えず、すぐに壁にあたってしまった。

普段なら誰かが囲炉裏の世話をしていて部屋の中はほんのりとオレンジ色に色づいている。
それなのに今日はどうして。

そこまで考えて思い出した。
自分は今神社の本殿にいるのだと。

たった1人で神様の生贄としてここにきたのだと。
だとしたら、さっき聞こえてきた足音はなに?

まさか本当に盗賊だろうか。
昼間ここへ来るところを見ていた盗賊が、自分を襲いに来たのかもしれない。

そう思い至った薫子は壁に背中をつけて「誰!?」と、大きな声で叫んでいた。
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